人情喜劇「坂田三吉」

作・演出 辻 三太郎

 監修 小島 岩

   制作 春らんまん

舞台監督 武田哲幸

明治42年、大阪の今池の長屋  

草履表(ぞうりおもて)の仕事もせず、

将棋に明け暮れしている三吉は高利貸しから金を借りて賭け将棋をするのだった。

高利貸しは無理やり娘の玉江の着物をカタに持って行くのだった。

隣りの銀次は

「それ、玉江ちゃんの七五三の着物だ 返してくれよ

三吉の妻小春さん子供2人連れて家出したよ。

「きっと自殺だよ」 長屋中大騒ぎ

そんな事とは知らず、三吉は大家さんと・・・

今日の将棋相手の関根7段に、

千日手という変な手で大枚(たいまい)3円取られた

 ずるいやつだ 

三やん 女房の小春さんが家出したよ。

だが、

自殺しようとした所にお父ちゃんの好きなビワが落ちていたから拾ってきた。

小春は子供の父に対する思いに自殺が出来ず・・・

あんた、それほど好きな将棋なら死ぬつもりでがんばって、

後は私がなんとかする。

将棋やってええんか、

よーし、わいはかならず関根はんに勝ってやる。

そして天下を取ってやる。

それから早や20年、

名人になった関根さんは三吉と対戦するのだった。

大人になった娘の玉江に

「おい、今日はようやと関根はんに勝ったで

お父ちゃん、

今日の将棋、関根先生がわざと負けてくれはったんよ。

なんやて! そんなアホぬかせ

お父ちゃんの将棋は品がないんよ、

扇子をバタバタ、胡座(あぐら)をかいたり、

人間的にゲスな雲助将棋、あれは勝ちではない。

その点、関根先生は泰然自若として落ち着いている、

お父ちゃんの心根を察してわざと負けたんや。

隣りに住んでいた銀次は今はヤクザになって、

高利貸しから金を借りて逃げていた。

偶然出会った三吉が今日将棋に勝ったお金を銀次の返済にあててしまう。

そこに小春と戻ってきた娘の玉江は、

お父ちゃん、家にはお金がないんよ、

ほんまにアホなお父ちゃん。

玉江、親をバカにするんか

あんた、やめなさい。

ワイの将棋はゲスか、雲助将棋か、

あんさんは一流になるお人や、王将になれるお人や。

あんさんと一緒にいる私は幸せです。

今までワイは人の心持が分からなかった、

人の心が分からなければ本物の将棋差しにはなれしまへんなぁ。

思わぬ閃(ひらめ)く将棋の手、だが三吉のカゲで吐血する小春。

そして関根名人と対局するために三吉は玉江を伴なって東京に行くのだった。

本物の将棋差しとなった三吉は因縁の関根名人と、

そして関根名人との真向勝負で三吉は王将の位を手にするのだった。

だがその時、大阪からの電話で小春が息を引き取ったことを知るのだった。

暫くして父三吉はお母ちゃんの所に旅たちました。

享年77歳、将棋人生の一生でした、

きっと今頃は二人して、

小春、ワイは関根ハンに勝ったぜ、

お前を幸せに出来へんかったなぁ。

あんさんと一緒になれただけで充分幸せでおます。

小春・・・・